ヤバいくらいに溺れてる
「あったまきた! ここ、あたしの部屋っ。誰だか知らないけど、そこのガキ、出ていきなさい」

あたしはパジャマで仁王立ちすると、ドアを指でさした

少年は口を緩めると、あたしのお気に入りパジャマ…イチゴの可愛いプリントを指でさして失笑した

「あんた、何歳?」

あたしは頬を膨らませると、少年を睨みつけた

「うっさいガキ! さっさと出て行きなさい」

「言われなくても出ていくっつうの。ズル休みしているオバサンと違って、俺、忙しいから。少ない休憩時間を縫って、荷物を持ってきただけ。ハイ、さよなら。ズル休みヒステリオバさん」

ニヤッと少年が笑うと、右手でひらひらと手を振った

「ちょ…待ちなさい!」

あたしは大股で、少年の背後につくと首根っこを掴んだ

「荷物、持って出ていきなさい。ここ、あたしの家なの、くそガキちゃん」

あたしは力をこめて、怒りの言葉を出した

「ここ、俺の家でもあるんで。ズル休みオバさん」

「はあ? 家賃払ってんのあたしなんですけど…」

「あんたの生活費になるバイト代を払ってんのは、俺なんすけど?」

「え?」

あたしの脳が停止した

少年の首根っこを持っている手の力を緩めると、あたしは乾いた笑いをあげた

「も…もしかしてぇ、一之瀬陽向君かしらぁ、おほほほ」

あたしが掴んだことによって、乱れた服の皺を整えるとあたしは、少年の細い肩を揉んだ

「…って、知っててあたしの名前を聞くな!」

つい肩を揉んでいる手に力が入る

「いたっ」

少年の顔が歪むなり、あたしは「おおうっ」っと言いながら、肩を撫でた

「…なあんてね。あんたみたいな女の力なんて痛くねえし。ってか、マジで時間ねえから。離れてよ」

パシッと少年が、あたしの手を払うと玄関で靴を履き始めた

「あ…あのぉ…」

あたしは少年の顔色を窺う

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