ヤバいくらいに溺れてる
「なんだよっ!」

がばっと身体を起こした陽向が、暗闇であたしを睨んできた

「『こっち来いよ』って言ったでしょ。だから来てあげたの。ママと離れて生活してて、ホームシックにでもなったのかしら?」

「聞こえてたのかよ!」

「もう、ばっちり」

「ふざけんなよ。二度も言わせやがって。あんた、壁側に行けよ。どうせ落ちるだろ」

「な…これでも寝相はいいのよ」

ばしっと陽向の頭をたたきながら、あたしはベッドの奥に入る

陽向はぼんっと乗っかっているだけの布団を、丁寧に整えていた

「昨日、ノーパンで寝たとき、大股開きで寝てたくせにか?」

「ちょっと、あたしの大切な場所、許可もなく見たわけ?」

「はあ? あんたが勝手に股を広げてたくせに許可が必要なのかよ。それに寝る前に一度見てるし、色気のない寝相に性的興奮なんか感じねえんだよ」

「何、それ。『こっち来いよ』って言ったくせに!」

「どういう繋がりだよ。意味がわかんねえ」

「あたしに興味があるんでしょ?」

「あのなあ…今、何時だと思ってるんだよ」

「あ、話逸らした。図星でしょ」

「うるせえなあ。もう寝るんだよ。あんたもさっさと寝ろ」

陽向は、あたしに背を向けて横になった

なんか、陽向の心がわかっちゃった気がする

思っている気持ちと、口から出てくる言葉が正反対なんだね、きっと

…ってあたしも、か

なんだろう、陽向にはついつい強がってしまう自分がいる

他の男なら、演技で甘えたりもできるのになあ

< 35 / 62 >

この作品をシェア

pagetop