ヤバいくらいに溺れてる
「これでよしっと」

「はあ…」

満足げにうなずく社長に、あたしは曖昧な返事をした

だんご虫のようにごろっと巻かれた包帯をじっとあたしは見つめる

片手であたしが巻くより下手かも…

「心愛ちゃんが怪我したって本当か?」

勢いよくドアが開くとそこには、身長が高くスレンダーな紫音さんが立っていた

父の従弟と結婚した紫音さん

憧れる女性モデルだった

結婚して子を産んでからも、しばらくはモデルをしていたけれど、5年前に引退して今は主婦業に専念してる

「あれ? なんで紫音さんが?」

あたしは首をかしげた

「彰吾の付添だ」

「デート中」

紫音さんの背後ににょきっと姿を出した彰吾おじさんが、あたしの顔を見下ろした

相変わらず身体の大きい人だ

「デートぉ? あれがか? あれのどこがデートなんだか」

「アイス食べた」

「高校生の清いデートかっ!」

彰吾おじさんと紫音さんの言いあいが始まるかと思いきや、そこで言葉を止めた二人が一気にあたしを見た

「指」

彰吾おじさんが、心配そうな目で見ている

「ああ、ズキズキするけど。神経まではいってないみたい」

「血だまり」

「見たの? 結構、血が流れたよねえ~。怪我したあたしがびっくりだよ」

「病院」

「行かない! あたしが病院嫌いなのおじさんが知ってるじゃん…てか、血で汚れたところを掃除しないとだよね」

あたしが立ち上がろうとすると、彰吾おじさんが首を横に振った

「陽向」

「え? なんで? 学校は?」

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