ヤバいくらいに溺れてる
「血族って怖い」

紫音さんがぶるぶるっと身震いをすると、腕をさすった

「へ?」

あたしは首を横に倒すと、紫音さんと社長を交互に見やった

二人とも口元を押さえて、笑いをこらえているみたいだ

「何?」

「彰吾に聞き返さずに、会話が成立するヤツってなかなかいないぞ。さすがは血縁者だ」

感心したように紫音さんが、口を開く

「だっておじさんっていつもこうじゃん。単語でぼそって言うのに慣れたっていうか」

「慣れる前に苛ついたぞ、私は」

紫音さんが、彰吾おじさんを横目で見た

彰吾おじさんは驚いたように目を開けると、すぐに紫音さんの肩を抱いた

「やめろよ。場をわきまえろってば」

「苛つくから」

「昔の話だよっ」

「今は?」

「聞くなっ」

「聞く」

「ああ…面倒だなあ。そういうのは帰ってからだ」

あたしはくすくすと笑って、二人の顔を見た

「おじさんと紫音さんのやり取りのほうが面白いよっ」

「そういえば、彰汰君は?」

「あの子は、全寮制の学校に入ってるから」

社長の質問に、紫音さんが答えた

彰汰とは、おじさんたちの子供だ

おじさんにそっくりで無口…というか一言で語る男だった

バスケの才能はあるのに、一人の女のために全寮制を選んだという噂を耳にしたことがある

「本当に父親にそっくりだよねえ~。好きな女と一緒にいたいからって、バスケの推薦を振っちゃうんだから」

紫音さんが肩をすくめた

「俺はバスケの推薦を選びつつ、紫音のいる学校を選んだ」

「あーはいはい」

紫音さんが面倒くさそうに返事をする

そうか…彰汰は、全寮制の高校にいるのか
< 39 / 62 >

この作品をシェア

pagetop