ヤバいくらいに溺れてる
「陽向ってここにいるの?」

あたしの疑問に、彰吾おじさんがこくんとうなずいて答えてくれた

「なんで? 学校は?」

「ごめーん。あまりの血の多さにびっくりしちゃって、陽向に電話しちゃった」

社長が苦笑しながら、口を開いた

え? 電話しなくていいのにぃ

「出席日数とか…平気なの?」

「うーん、よくわかんないんだ。そういうのって本人に任せているから」

社長が恥ずかしそうに笑う

「いいんじゃないの? 好きな女のために走る男のほうがいいって」

紫音さんが、あたしの隣にある椅子に腰を下ろした

「…て、彰吾にみたいに走りすぎはよくないけど」

「走りすぎたのか?」

「はーい、無自覚者がここにいまーす」

紫音さんは、興味なさげに声をあげるとあたしの指に巻かれてある包帯に目を落とした

「相変わらず莉緒ちゃんはぶきっちょだよなあ」

「が…頑張ったんだけどねえ」

あははと、社長が渇いた笑いをあげた

「そういえば桜嗣は?」

紫音さんが、社長の眼をやった

「ああ、今日から一週間。仕事でフランスに行くって」

「どうりで、事務所が静かなわけだ」

紫音さんが納得したように頭を振った

「だから、つい陽向に電話しちゃったていうか…」

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