ヤバいくらいに溺れてる
「あのさあ。俺、一応モデルなんですけどお。身体を売りにしてない人が大勢集まっているにもかかわらず、なんで俺が水仕事なのかなあ?」

楽しい会話に水をさした陽向が、大きな声で間に割ってきた

ドアに肩を寄りかかせて、腕を組んでいる陽向が不機嫌な顔をしていた

「あ…ごめん」

あたしはつい謝ってしまう

「最年少者が偉そうに言うな」

紫音さんが、振り返ると陽向に向かって口を開く

「俺、モデル」

「だから?」

紫音さんが、眉を引き上げる

「手が荒れたらどうすんだよ」

「手荒れを気にするよりさ。もっとあるだろ。好きな女が怪我したんだ。しかもあんたのファンレターで」

「考えなしに、手紙の中に手を突っ込むからだろ」

「馬鹿な男だ」

紫音さんがにこっと笑うと、立ち上がった

「彰吾、帰るぞ。好きな女を大切にできない男の顔は見ていて苛々するんだ」

紫音が、社長に挨拶をするとすたすたと事務所を出て行った

「土日なら彰汰がいる」

彰吾おじさんがあたしに、口を開くと背を向けて歩きだした

「わかった。週末に遊びに行くよ!」

あたしの返事に、彰吾おじさんは振り返らずに手をひらひらと振った

「…たく、なんだよ。俺を学校から無理やり連れ出しやがって」

「は?」

あたしは陽向の顔を見た

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