ヤバいくらいに溺れてる
「なんとなくわかった」

あたしは呟くと、枕に顔を埋めた

「は? 何が?」

「苛々してた理由が」

「やっぱ苛々してたんだろ?」

「うん、してた。陽向の言うとおり怖かった」

陽向が大きな手で、あたしの頭をぽんぽんと軽く叩いた

「俺、手紙には触るなって言ったけど…あれは、別にあんたが使えないとかじゃないからな。誤解するなよ。あんたが怪我したってもう聞きたくないから、そう言っただけだ」

「うん」

「倉庫で、あんたの血を掃除しながら、怖かった。どんな傷なのか…神経がいかれるくらざっくりいってたら…って想像するだけで、手紙を送った人間を恨んだよ」

「あれは…あたしがいけないんだよ。何も考えずに手を突っ込んだから」

「ま、それも一理あるけどな」

「ちょ…ええ? そこで『そんなことないよ』って言ってよ。てか、言いなさいよ」

「ああ、また始まったよ」

陽向が、肩をすくめるとベッドをから離れた。

さっきまで座っていたテーブルの前に腰を下ろすと、シャーペンを持った

「何が始まったのよ!」

「せっかく良い雰囲気になると思ったのに。ま、あんたはそれくらいのほうがいいのかもな」

「はあ? 意味がわかりませーん。何が『良い雰囲気』よ。ぶち壊したのはそっちでしょ」

「あれ? あれれ? もしかして期待してた? 俺があんたに何かすると?」

「馬鹿じゃないの? 陽向に何かされても、別に何とも思わないし!」

「強がっちゃってまあ…素直じゃねえよなあ」

「何、それ。強がってるのはそっちでしょ。さっさと宿題を終わらせなさいよ、お子ちゃま!」

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