ヤバいくらいに溺れてる
陽向が雑誌を丸めると、ぽいっとゴミ箱に捨ててしまった

「ちょっと他のとこも読みたいんだけど」

「駄目だ。これは見なくていい」

「なんで、勝手に陽向が決めるのよ! あたしが買ったのよ。あたしが読者なんだから、読むのはあたしの自由でしょ」

「駄目っつたら、駄目なんだよ。俺が見られたくないんだ。いいか、絶対に見るなよ」

陽向がものすごい怖い顔で、あたしに言い放った

「わかったわよ。読まなきゃいいんでしょ。なら、雑誌代ちょーだい」

あたしは手を陽向に出した

「…600円でいいか?」

「うん、いいよ」

陽向が1000円札をあたしの手のひらに乗せた

「釣りはいらねえよ」

「釣りを渡す気もないよ」

「ああ?」

「何よ」

「別に」

陽向は、ぷいっと横を向くと「ふう」っと息を吐き出していた

「そんなに見られたくないのに、どうしてインタビューに答えたの?」

「仕事だから。それにあんた以外のヤツなら、見られてもどうってことないし」

「何よ、それ!」

「怒るなよ。見られたくないんだから仕方ねえだろ。俺、あんたを大切にしたいんだ。偽りの言葉で、あんたと接したくない。それだけだ」

「え?」

あたしは陽向の背中を見つめた

「前に言っただろ。俺はあんたを愛してるって。ずっと傍に居たいって思ってた。同じ部屋で一緒に過ごせてるって俺にとったら夢みたいで、今の関係を壊したくない。あんたが俺を好きになってくれるまで、俺は『俺』の言葉で、あんたと接したい。『モデルの陽向』じゃなくて、『俺』でありたいんだ」

「…ありがと。でもあたしは…」

「答えは急いでないから」

陽向はあたしのほうに振り返ると、さびしそうに微笑んだ
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