ヤバいくらいに溺れてる
なんでこんなことになったのか?

どうして、こんな最低男と一緒にカラオケボックスという密室にいるのだろう

ただひたすら過去の話をして、怒り奮闘のあたしに、芝原が正座をして一つひとつに謝っていた

途中から、別に、あんただけのせいじゃないし…って心の隅で思ってみたりもした

だって今まで、だらけた生活だったのは、芝原のせいっていうより、あたしの責任だろう

根源は、芝原のしたことにあるかもしれないけれど

立ち直ろうと努力すれば、変わった人生だってあったはずだし…過去に引きずられて、びくびくと生きてきたのはあたしであり、芝原に謝って貰う義理はないのかもしれない

…なんて、冷静に考えている自分がいた

「もう…いいや」

カラオケボックスに入って2時間

あたしは、「はあ」とため息をつきながら手に持っているマイクをテーブルに置いた

「え?」

芝原が、ぱっと顔をあげて不思議そうな顔をしている

「芝原のしたことはたぶん、一生許せないよ。だからって謝ってもらっても嬉しくないし、心が軽くなるわけでもないんだよね」

なんとなく…わかっちゃった

今まで、芝原のせいにして、真面目な恋愛はせずに、いろんな男と付き合って小遣いをもらって生きてきたけど…

それって芝原のせいじゃないんだ

あたしが、自分の心と身体と向き合うのが怖いんだ

汚れた身体だって認めるのが怖い

なにをしても綺麗な身体には戻れないことを知っていて、それでも戻りたいってどこかで思っていて、なのに諦めている

努力が怖い

努力しても、綺麗な身体が戻ってこないとわかってるから

答えがわかっているから、誰かのせいにして、現実から逃げたくなる

それでも愛が欲しいと思うから、結局、金と愛を混同させてしまう

馬鹿だな…あたし、なんでもっと早く気付けなかったのかな?

< 50 / 62 >

この作品をシェア

pagetop