ヤバいくらいに溺れてる
あたしはふっと己自身を笑っていると、携帯がけたたましく鳴りだした

「ちょ…ごめん」

あたしはがさごそと鞄の中から、携帯を出すと、耳にあれた

『お前は…何をしてんだ! お前の茶菓子は、カラオケにあるか? ああ?』

鼓膜が破れんじゃないかってくらいの大きな声が、携帯から飛び出してきた

「陽向?」

『ああ? んだよ』

「何してるの?」

『ああ? そりゃ、俺のセリフだっつうの。何、やってんだよっ。菓子を買いに出かけて切り、何時間も帰ってこないで…カラオケに行ってんじゃねえよ』

「なんで知ってるの?」

『あのなあ。このドアを蹴破ってもいいんだぞ』

え?

あたしは携帯を持ったまま顔をあげた

ドアにある小窓から、陽向が、怖い顔をして覗き込んでいた

「あ…」

『「あ」じゃねえんだよ。さっさと出てこい』

「うん」

あたしは携帯を閉じると、鞄を手に取った

「芝原、ごめん。あたし、帰る。もう、あんたの顔は見たくない」

あたしは、芝原の顔も見ずにカラオケの部屋を飛び出した

「陽向、どうして?」

「『どうして』だあ? あんたが戻ってこないからだろうが。いちいち、世話を焼かすな。馬鹿やろう」

「ごめん」

「あ?」

陽向が、首を傾げた

「何?」

「いや、別に。大人しいなあと思って」

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