ヤバいくらいに溺れてる
陽向が不思議そうな顔をしながら、あたしの隣で足を動かして歩いていた

「ここに来たこと…後悔してるから。でも、収穫もあった。あたしがいけないんだって気づけたから」

「はあ?」

陽向が、眉間に皺を寄せてさらにわからなそうな表情になった

「人を愛せなかった理由…人に愛されなかった理由…、それがなんとなくわかった気がした。あたし、今、すごく誰かに愛されたいって思う」

あたしが頬を緩めて笑いかけると、陽向があたしの肩に腕をかけて引き寄せた

「俺が愛してる」

「うん、ありがと」

陽向が、あたしの額にキスをすると、あたしの髪を手のひらでぐしゃぐしゃにした

「…で? 部屋にいたヤツは誰?」

「中学のときの…」

「彼氏か?」

「違う」

「は?」

「片思いしてたけど、ろくでもない男だった。それだけ」

「そうか。俺の良さがわかっただろ?」

「どうかな?」

「ふっ」と、陽向が不敵な笑みを見せた

ズルいな…そんな顔して

胸が苦しくなるじゃない
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