ヤバいくらいに溺れてる
「…って、ちょっと! なんで今日もあたしが閉め出しになるわけ?」

あたしはアパートの部屋のドアをどんどんと叩いた

中では、陽向が優雅にお茶を飲んでいるのが見えた

「ねえ、開けてよ! 聞こえてるでしょ、あたしの声が」

ちらっと陽向があたしの顔を見て、すぐに視線を外した

「ちょっとぉ。なんで? それがあたしを愛しているっていう男の行動なわけ?」

「誰かさんのせいで、俺…受けられる授業をさぼる羽目になったんだ。ただでさえ、忙しいスケジュールとにらめっこして、留年しないように学校に行ってるのに」

少し大きなめな独り言のように陽向が呟いた

「そう思うなら…来なきゃいいじゃない。電話だけで」

「俺が行かなかったら、どうしたんだ? カラオケで歌も歌わず、寄り沿うように座ってて、何もなく帰ってこれたのかよ」

「帰ってこれたわよ…たぶん」

「不確定な言い訳はするな。俺が行かなければ、流されてただろ。絶対に」

「怒ってるの?」

「怒るだろ。あんたが俺以外の男と、密室にいたんだぞ? 笑顔で立っていられるかよ」

陽向が、玄関に近づいてくると、チェーンを外してくれた

「ごめんね」

「謝るな。むかつく」

「じゃあ、どうすればいいのよ」

玄関で靴を脱ぎながら、あたしは文句をたれた

陽向が、あたしをじっと見つめてくる

目を少し細めると、あたしの肩に手を置いた

もしかして…キス、してくれるのかな?

あたしはゆっくりと瞼を閉じた

「知らねえよ。自分で考えろ」

陽向の手がすっと離れると、部屋の奥へと入ってしまった

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