ヤバいくらいに溺れてる
「…って、ちょっと彼女に対してこれって失礼じゃないの!」

あたしは真っ暗な部屋の中で、大きな声をあげた

「あ?」とベッドの中で横になっている陽向が、不機嫌な声をあげた

あたしは床の上で、布団にくるまっている陽向の背中をばしばしと叩いた

「なんで、一緒に寝させてくれないのよ! しかもあたしが床って有り得ないんですけど」

「一緒に寝る? それこそ有り得ねえだろ」

「何それ! あたしは陽向の彼女よ。恋人でしょ? 大切に扱うって言ったのはそっちじゃない」

「大切に扱ってるだろ!」

「どこが?」

「こうやって別々に寝てること自体が、大切にしている証拠だろ」

「はあ? 意味がわかりませーん」

あたしは首を横に振っていると、がばっと陽向が起き上がった

「じゃあ、心愛がベッドで寝ろよ。俺が床で寝る」

「ん、それなら良し」

「…んだよ。ただベッドを使いたいだけじゃねえかよ」

陽向がブツブツと文句を言いながら、ベッドから離れて床に座った

あたしは、ベッドの上に座ると、まだ陽向の温もりの残っている布団の中に身体を入れた

「一緒に寝る?」

あたしは陽向に声をかける

陽向が首を横に振って即答する

「有り得ねえ」

「何よ、それ!」
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