ヤバいくらいに溺れてる
『ごめんねえ。あの子、高校に近いところにアパートを借りて一人暮らしをしてたんだけど、そのアパートが火事になっちゃって。高校に一番近い場所に住んでる事務所の職員に世話になるからって。女の子のお部屋にお邪魔して、ほんと、ごめんなさいねえ』

「あ、いえ。火事って……」

『ええ。たいしたことないのよ。隣の部屋の人の煙草の不始末だったみたいで、陽向は肩と太ももに火傷を負ったみたいだけど、撮影に何の支障もないって」

え? 肩?

もしかしてあたしが掴んで痛がったところって、もしかして火傷があった?

だから痛そうに顔をゆがめた?

なのに、どうして痛くないふりなんかしたのよっ!

意味がわかんないよ

痛いなら、痛いって言えばいいのに

火傷してるんだから、触るなって言えばいいのに

なんで黙ってるの?

『しばらく心愛ちゃんの家にお世話になってもいいかしら? すぐに高校の近くで空き物件を探すから。ごめんねえ。2、3日でいいから』

「いいですよ」

あたしは明るい声で返事をした

2、3日だけなら…全然、平気!

どうせ、仕事でほとんどアパートに戻って来ないんでしょ?

俺は忙しいとかって言ってたし、寝るためだけに帰ってきて、朝になればどっかの撮影場所に行くのよ

だから、2、3回…ほんの数時間の我慢でいいのよね

そのほとんどは寝てるだろうし

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