ヤバいくらいに溺れてる
「…って、全然違うじゃない! 何、その長期滞在モード全開はっ」

あたしはベッドの前で仁王立ちにすると、陽向が組み立てたカラーボックス一つと、ラックを睨んだ

「はあ?」

手を怪我しないようにつけていた軍手を外した陽向が、振り返ると面倒くさそうに身体を動かしてあたしの顔を見る

「親から連絡がいかなかった? 詳しい説明をして、許可を得たって聞いたけど」

「何の許可よ」

「ここから高校に通う許可」

「ええ、得てあげたわよ。2、3日って条件のもとでね。それくらいならくそガキがいてもいいですよ…って言ってあげたわ」

「なら、俺の私物を置くために棚を作るくらいいいだろ」

「だからっ、それがおかしいでしょ! 変でしょ」

あたしはカラーボックスを人差し指でさした

「なんで、これが必要なの? スポーツバック一つでいいじゃない。2、3日よ? すぐ、ここを出ていくのよ? 棚なんて必要ないでしょ?」

陽向が、くすって笑うと肩を揺らし始めた

「俺、ここからしばらく学校に通うつもりでいるし」

「は?」

あたしはわざとらしく耳を陽向に耳を差し出した

「耳の遠いおばさんだなあ! 2、3日じゃねえって言ってんだろ。前住んでたアパートより好条件の場所だしな。2、3日ならいいって許可を出したんだろ? 別に、日数が増えたからって変わんねえっつうの」

「変わるっつうの!」

あたしは手を腰にやると、軍手をテーブルの上に投げてすっかりリラックスモードに切り替えた陽向を上から睨んでやる

陽向は、栗色の髪を指先で遊ばせながら整えると、にやりと勝ち誇った顔をした

「どんなにヒステリックになって怒ったところで、現実はかわらねえよ? 俺、もう決めてるし」

「勝手に決めないでよ」

「許可も得てるし」

「得てないし!」

「……じゃあ、バイト料を3割増しにしようかと思ったけど…ナシってことで」

「おっ? それはぁ、お姉さん、知らない事実なんですけどぉ」

 
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