ヤバいくらいに溺れてる
あたしは人差し指で、テーブルの前に座っている陽向の背中をツンツンと突いた

陽向が、肩をまわして「触るな」とアピールしてくるが、あたしは気にせず、背中のあちこちを突きまくった

「『お姉さん』? おばさんの間違いだろ」

「ちょいちょい、3割増しにしてくれるのぉ?」

「真面目に仕事すれば…な」

「しまーす。もちろん、しますよ。あたしを舐めないで」

「仮病使って、休みまくってるヤツのくせに」

「うるさい」

あたしの前で床に座り込んでいる陽向のシャツの隙間から、肩の火傷が見えた

あ、赤くなってる

痛そうなのに、痛くないの?

平気な顔をしてるけど

「あの…さ」

「あ?」

まだ何かあるのかよ…て言いたげな表情で、陽向が振りむいた

「背中…痛くないの?」

「背中? なんで?」

「火傷の痕があるから」

「ああ、これ? 痛いよ。今日の撮影には、影響はなかったけど、今後の仕事でいつかは支障がでてくる。早めに病院に行くべきなんだろうなあ。痕が残るようなら、手術する必要もあるだろうし」

「手術?」

あたしは、驚いて大きな声を出す

「そうだろ? 俺は身体が商品なんだ。傷が残るなら、消なくちゃ」

「そんな…まるで消しゴムみたいに…」

「そう。消しゴムみたいに消すんだよ。病院に行って」

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