近未来拡張現実エンタメノベル『MIKOTO-The Perfect PROGRAM』
☆クロスオーバー
☆クロスオーバー(1)
深紫の空、迫る日没。
サンセットビーチとヤシの木がものすごい速度で俺の右を走り抜けていく。
巡航速度は78キロに達していた。平地なのでここまでは何とかなる。
だが1秒ごとに確実に闇は深さを増していく。早めに距離を稼いでおかないとやばい。
ヘッドセットから小さく勇壮な音楽が流れはじめた。まいらがHMDをかぶり、ヘリコフの発進準備を開始したのだ。
「お兄ちゃん!」
まいらの声だ。無線通信で若干くぐもっている。呼吸を整える。
「はぁ、はぁ、準備出来たか!?」
「うん!どのタイミングで発進すればいいの?」
「プロペラが見えなくなってから、5秒!」
「わかった!」
流れる汗。風圧の塊が身体を押しかえす。太腿が悲鳴を上げはじめる。
どんどんルクスを下げていく空。見えなくなる車道。地球の自転との闘いだ。
高速で駆けてゆくヤシの木の向こうにひょうたん島が浮かんでいた。距離にして半分くらい進んだか。
「お兄ちゃん!見えなくなった!」
この時を待っていた。カウントダウンだ。
「5、4、3、2、1!」
『発進!!』
ヘッドセットとHMDで、ふたつの声が重なった。
ヘリコフの上昇音が聞こえる。BGMの音量が上がる。HMDの中の銀河の海が見えるような気がした。
俺は多々羅大橋にひたすらペダルを漕ぎ続ける。その間、彼女の応援の声が頼もしく聞こえていた。
まいらは変わったのだ。幼い日に、母を亡くしたあの日から。
深紫の空、迫る日没。
サンセットビーチとヤシの木がものすごい速度で俺の右を走り抜けていく。
巡航速度は78キロに達していた。平地なのでここまでは何とかなる。
だが1秒ごとに確実に闇は深さを増していく。早めに距離を稼いでおかないとやばい。
ヘッドセットから小さく勇壮な音楽が流れはじめた。まいらがHMDをかぶり、ヘリコフの発進準備を開始したのだ。
「お兄ちゃん!」
まいらの声だ。無線通信で若干くぐもっている。呼吸を整える。
「はぁ、はぁ、準備出来たか!?」
「うん!どのタイミングで発進すればいいの?」
「プロペラが見えなくなってから、5秒!」
「わかった!」
流れる汗。風圧の塊が身体を押しかえす。太腿が悲鳴を上げはじめる。
どんどんルクスを下げていく空。見えなくなる車道。地球の自転との闘いだ。
高速で駆けてゆくヤシの木の向こうにひょうたん島が浮かんでいた。距離にして半分くらい進んだか。
「お兄ちゃん!見えなくなった!」
この時を待っていた。カウントダウンだ。
「5、4、3、2、1!」
『発進!!』
ヘッドセットとHMDで、ふたつの声が重なった。
ヘリコフの上昇音が聞こえる。BGMの音量が上がる。HMDの中の銀河の海が見えるような気がした。
俺は多々羅大橋にひたすらペダルを漕ぎ続ける。その間、彼女の応援の声が頼もしく聞こえていた。
まいらは変わったのだ。幼い日に、母を亡くしたあの日から。