近未来拡張現実エンタメノベル『MIKOTO-The Perfect PROGRAM』
☆サイレントウォーク
☆サイレントウォーク(1)
深紫のはなぐもりの空、太陽が水平線の向こうに落っこちようとしていた。
サンセットビーチの右端、ぬるい真夏の空気の中。
防波堤のふもとに立つと、俺は丸いガラスびんの中に入った黄緑のキャンドルに、チャッカマンで火をつける。
「じゃあここからサイレントウォーク開始ね。はい」
まいらが彼女に右手を差し出した。戸惑いながらも手をつなぐ。
今度は俺が彼女と手をつなぐ番だ。
なのに、早くつなぎたい俺の左手がためらう。
「ほら、何やってるの!さぁさぁつないでつないで」
笑顔のまいらにうながされて手をつないだ。手のひらが汗ばんでいた。
サイレントウォークのルールはこういったものだ。
俺が父役となり、キャンドルを持って波打ち際を歩く。
まいらは母役で、いちばん外側。
そして彼女は真中でふたりの手を握り、子役として歩くのだ。
父役の俺は子の手を引き、キャンドルの灯りを手掛かりに、先導して歩くことになる。
そして一番大事なルールは、「ひとこともしゃべらないこと」だ。
まるでまだ言語を持たない太古の人間のように、アイコンタクトとボディーランゲージだけで意志の疎通が行われる。
そんなふうにして、720メートルあるサンセットビーチの浜辺を、ゆっくりゆっくりと歩くのだ。
程なく沈む夕日。フェードアウトしていく空。
静かに砂で砕ける波の音。砂を踏む音。耳をつんざく静寂感。
キャンドルの灯り。手のひらから伝わる体温。
少しづつ深まる濃紺のグラデーション。彼女の頬がキャンドルと夕陽に紅く染まっている。ふわり、とシャンプーの匂いがした。
手をつないだ3人のシルエットが穏やかなオレンジの海面をバックに、ゆっくりと前に進んでいく。
少しづつ、気持ちが落ち着いていくのがわかった。
深紫のはなぐもりの空、太陽が水平線の向こうに落っこちようとしていた。
サンセットビーチの右端、ぬるい真夏の空気の中。
防波堤のふもとに立つと、俺は丸いガラスびんの中に入った黄緑のキャンドルに、チャッカマンで火をつける。
「じゃあここからサイレントウォーク開始ね。はい」
まいらが彼女に右手を差し出した。戸惑いながらも手をつなぐ。
今度は俺が彼女と手をつなぐ番だ。
なのに、早くつなぎたい俺の左手がためらう。
「ほら、何やってるの!さぁさぁつないでつないで」
笑顔のまいらにうながされて手をつないだ。手のひらが汗ばんでいた。
サイレントウォークのルールはこういったものだ。
俺が父役となり、キャンドルを持って波打ち際を歩く。
まいらは母役で、いちばん外側。
そして彼女は真中でふたりの手を握り、子役として歩くのだ。
父役の俺は子の手を引き、キャンドルの灯りを手掛かりに、先導して歩くことになる。
そして一番大事なルールは、「ひとこともしゃべらないこと」だ。
まるでまだ言語を持たない太古の人間のように、アイコンタクトとボディーランゲージだけで意志の疎通が行われる。
そんなふうにして、720メートルあるサンセットビーチの浜辺を、ゆっくりゆっくりと歩くのだ。
程なく沈む夕日。フェードアウトしていく空。
静かに砂で砕ける波の音。砂を踏む音。耳をつんざく静寂感。
キャンドルの灯り。手のひらから伝わる体温。
少しづつ深まる濃紺のグラデーション。彼女の頬がキャンドルと夕陽に紅く染まっている。ふわり、とシャンプーの匂いがした。
手をつないだ3人のシルエットが穏やかなオレンジの海面をバックに、ゆっくりと前に進んでいく。
少しづつ、気持ちが落ち着いていくのがわかった。