婚約指輪を君に~恋した相手は17歳の王子様!?
広がるのはただ広がる海。
決して綺麗とは言えないけど。
それでもあたしの目の前に広がるのは
確かに海だ。
「ん~!!」
暫く乗っていたからか、
自然と背伸びをする。
「気持ち良くない?」
明るい、いつもの声。
さっきのは気のせいだったの?
「まぁね」
「さすがに沖縄ほどではないけど」
「確かに」
お互い顔を見合わせてクスッと笑い合う。
「食事何時?」
「え~と6時に亭国ホテル」
「あぁ、銀座の」
「知ってるの?」
「まぁ、パーティーとかちょくちょく出されてるし」
そっか・・お坊ちゃま、だもんね。
「しかし風気持ちいいなぁ」
「そうだね」
こうして海を見ていると
昔の子供の頃を思い出す。
おばあちゃんと一緒に海を見ていた時を。
いつも笑顔で優しくしてくれたおばあちゃん。
海の歌をあたしに教えてくれたっけ。
何故かその歌をいつも聞くと寂しい気持ちになって
「もう歌わないで」
と拒んだ事があった。
今は離れて暮らしているけど。
おばあちゃん、元気かな・・
「・・い、葵!」
「え?」