婚約指輪を君に~恋した相手は17歳の王子様!?
名前を呼ばれて我に返ると
「ボーっとしてる」
大きな手があたしの頬に触れる。
「どうかした?」
その手がくすぐったくて
でも
不思議とイヤな感じはしない。
「ううん、何でもないの」
首をブンブン振ってそう答える。
「葵」
声が聞こえて
慧との距離がぐっと近くなる。
この先、慧に何かされるのを知っていながら
どうして拒むことができないんだろう。
瞳を閉じて慧のキスを受けようとしたその時、
「♪~~」
スカートのポケットから鳴るカノン。
その音で
自分がとんでもない事をしそうになっていた事に気付く。
あたしには響汰がいるのに・・
何やってるのよ
「ごめん」
そう断って携帯を取り出そうとすると
「やだ」
ポケットに入れようとした手をグイッと引っ張られる。
「慧?」
「今だけは、今の時間だけは俺に頂戴」
真剣な瞳が突き刺さる。
そんな目をされたって
「でもあたし」
これ以上は
「今だけ。そしたら、葵を返すから」