婚約指輪を君に~恋した相手は17歳の王子様!?
「俺さ、この家嫌だった時があったんだよね」
榊に視線を移すことはなく、そのまま話を続ける。
「左様ですか。そのようなお話を聞くのは初めてです」
だよね、誰にも言った事なかったし。
「別に何不自由なく暮らしてきたけどさ」
変わらない日常。
同じ毎日の繰り返し。
将来は後継ぎかどうかは知らないけれど
周りの大人連中にチヤホヤされて。
もっと別の生き方をしていたら・・なんて思ってた。
そんな時だったんだ、葵に会ったのは・・
「その時の葵ってばおお泣きしててさ」
車から逃げて全力で走って
やっと休憩できそうな場所を見つけたと思ったら
その場所で葵はベンチに座っておお泣きしていた。
それこそ
「ママ~あのお姉ちゃんどっか痛いのかな?」
「こらけんちゃん見ちゃだめよ」
なんて歩く人達から変な目で見られる始末。
何で心配されたかって?
「ううううう~~~~」
こんな感じで唸りながらうずくまっていた。
俺もどっか具合悪いのかなって思ったけど。
たまに背筋伸ばして横に置いてあった
ペットボトルに口付けて飲んでからまたうずくまったから。
すぐに具合悪いんではない、って思った。
でもどうしても気になって声をかけてみたんだ。
そしたら何て言ったと思う?