キススキ
もう春になったってのに...。

冬と変わらない風を起こす。


「さっむ...。」

ふいに漏らしたその言葉に

外山くんはぴくんと反応して、

自分で着ていた赤いパーカーを

あたしの肩にかけてくれた。


「あ、ありがとう...。」


あたしはビックリして、

笑顔を向けることさえもできなかった。

なにも言わないけど、

外山君だってすごい寒そう...。


やっぱパーカー返した方がいいかなぁ...。


「あのさ。」

あたしがパーカーを返そうと、

肩を動かすと同時に外山くんは何か言った。


「え...?」

あたしはよく聞こえなくて、

聞きなおした。


「仁奈ちゃん、キスしたいの?」

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