甘い夏  煙草の匂い



「そんなに、酷かったんだ?糖尿。」

「食事訓練の為に入院だって。2週間。by秘書。」

「…それで?ついでにナンパ?」

「…。」


何も言わず、肩をすぼめて歩きだす。


進也は以前から、あの社長秘書に気に入られている。何度もお誘いがあるようだ。

百合子との事は、事務所内でもシークレット。メンバーと社長しか知らない。

その為、あんな風にいろんな女から言い寄られる事が多い。



…誰にでもイイ顔するからだ。ざまぁみろ。



「…それより、龍太…。」

「あ?」

「また、写真が届いたらしい…by秘書。」

「何の?」

「…例の。」


例の…あ!!


「いつ?!」

「昨日…らしいんだけど…。」


よく見ると、進也の手元にはA4サイズの紙があった。


「これか?」

「うっ…。」


手にとって見ようとすると、進也が気まずそうな顔をしながら、紙を離さない。


「…どうした?」

「いや…やましい事はないから…。」


そう言いながら、スルスルと手を離す。紙と一緒に写真が一枚床に落ちた。




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