甘い夏  煙草の匂い



「社長にだけじゃなく、お前にまで嫉妬するところだったよ。」

「…さっき、『お泊まりズルい』って言ってたじゃねぇか。」

「は?言ってねぇよ!」

「言ってたぞ?独り言みたいにブツブツと…。」


…ありゃ、声に出てましたか?


社長室からほど近い廊下で話し込んでいると「お~っす。」とデカイ男のデカイ声が聞こえた。


「何してんの?こんなトコで。何コレ?」


いきなり現れた栄四郎が、俺が持っていた紙と写真を取り上げた。


「…うわ!何?浮気?きゃ~!!」

「ちげぇよ。」

「ヤリマンだって!きゃ~!やっちゃった?どうだった?」

「だから、ちげぇって!」


きゃ~きゃ~言っている栄四郎から、無理矢理取り上げた。

「何で龍がムキになってんの?」

「栄四郎…その子だよ、龍太が惚れた子。」

「あぁ?マジで?何で映ってんのが進也なの?」

せっかく取り上げた写真を、また栄四郎に取られてしまった。


「…あれ?掃除の子?まさかな…。」

「知ってんの?」

「今、エントランスにいた子に似てる。スゲーちっちゃかったけどな。こんくらい?」






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