甘い夏 煙草の匂い
いつもは穏やかな進也がキレた事に、俺も栄四郎も面喰らった。
…確かに、自分の事だけ考えていて、コイツら…いゃ、仕事を忘れていた気がする。
「わりぃ…今まで、こんな事なかったのにな。」
「いゃ、あったよ。」
突然、真顔で進也がツッコむ。
「?いつ?」
「なんつったっけ?ほら、東京に連れてきたコ。あのコに振られた時。」
「あぁ、あん時も酷かったな。あの頃は駆け出しだからたいした仕事も少なかったけど。」
「…でも、今は違う。お前の事を待ってる人達が沢山いるんだよ!
もうプロなんだから、わきまえて行動しろ!」
「はぁい。右に同じぃ。」
「…俺、左側にいるぞ?」
「細かい事は気にしないで?進也さん。」
そうか…俺、同じような事をして、コイツらに迷惑かけてたんだ…。
あの頃は…彼女が家を出ていった事を認めたくなくて、家に帰ろうとせず、がむしゃらに仕事してたような気がしてた。
しかし…人から見たら、ただ暴走していただけだったんだ…。