甘い夏  煙草の匂い



「ひゃっ!」

「うおっ!」


雷嫌いじゃない俺でも、声が出てしまうくらいデかい雷だった。


「すご…」



その直後、目の前が真っ暗になった。



「きゃあっ!」

「…停電か?」



きっと、一時的なものだろう…。そうなだめる為に、真那の傍へ近寄ろうとした…。



― ガンッ ―


「イテッ!」


― バシャ ―



「「あ」」



真っ暗な部屋だが、何か水のような物が溢れた音がした。


「わりぃ!」

「いえ、多分テーブルに置いていた麦茶ですから。大丈夫ですか?」


屈んで畳の上を確認すると、溢れた水分の近くにコップらしき物が落ちていた。


「あぁ、俺は大丈夫。タオルタオル…」

「あ…ありますから、大丈夫です。…この辺ですか?」



そう聞こえたかと思うと、指先でタオルが動くのがわかった。

…この暗闇で、よくタオルを見つけたな?




― チカチカ…パッ ―




「「あ…」」



ようやく着いた明かりを二人で見上げる。


「よかった」と真那に声かけようとするが…目の前の事実に、一瞬目眩がした…。




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