甘い夏  煙草の匂い



― プルルルル ―


「おっと…んじゃ、電話だから。」

「あ、写真…」


香水臭い秘書にウンザリしてたから、恵みの着信はラッキーだった。

ディスプレイを見ると、進也だった。


「もしもし?サンキュ。」

「…は?」

「…いゃ、サンキュじゃねぇな。お前、後で話しあるからな。」

「オイオイ!俺が掛けた電話だぞ?」

「チッ。なんだよ?」

「…百合子が、今夜呑むぞ…だって。」

「ご勝手に。」

「真那も一緒に。」

「行きます。」

「…ハイハイ。9時に真那を迎えに行くから。」

「俺も行く。」



今日は土曜日…。真那は仕事休みだな?


…9時まで、独りで大丈夫か?



来週末になれば、俺達のツアーが始まる。同時に、百合子もツアーの真っ最中だ。…てことは、今日は帰ってくるのか?

独りにするのは不安だが、3日後には社長が退院してくる。事情を話せば、真那をアパートに置かなくなるだろう。

その方が安心だが…。



…真那を独り占め…ズルいぞ?ひげオヤジ!




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