甘い夏 煙草の匂い
「…おい、スピード出しすぎじゃね?」
進也に言われて確認すると、法定速度は軽く越えていた。
「…おぉ、やべ。」
管轄の警察が忙しい事に感謝します。
真夏は陽が沈むのも遅く、工場が夕焼けに照らされて、赤く幻想的だった。
真那のアパートも、赤く光っている。
「んじゃ、行ってくるわ。」
いつもの、何もない寂しい場所に車を停め、真那の部屋に向かう。
『家の事をしている』と言ってたから、部屋にいるだろう。
約束の時間より早いから、驚くかな?
― コンコン ―
…。
…?
「真那?俺だけど…」
『…ンっ…ンンッ!』
― ドンッ! ―
『てめっ…』
…真那の部屋から、知らない男の声が聞こえた…。