甘い夏  煙草の匂い



「真那!」


ドアノブを回す…ご丁寧に鍵が掛かっている。


「…っきしょ!」


足で力任せにドアを蹴る。

さすがボロアパート。一撃で蝶番が外れた。






「真…!」





一瞬…背中に氷が伝ったようだった。






古いキッチンのクッションフロア…その上には真那と馬乗りになった知らない男…。


真那は…腰の後ろで手首を縛られ、口にはタオルを押し込まれている。


いつか見た、ワンピースの部屋着…は着ているが、裾は腰まで捲られていて…パンツは今にも脱がされそうになっていた…。




「…ンンッ!」


涙と鼻水でボロボロになりながらも、必死に訴える。



「…テメェ…」



驚きと怒り…目の前が真っ暗になった。



「…うあっ…!」


…気が付くと、部屋の隅まで移動している男…。


足が痛い…俺が蹴ったのか?



「…真那!」


真那の事は蹴ってないよな?

急いで真那の体を抱き起こし、口からタオルを取り出す。





< 138 / 206 >

この作品をシェア

pagetop