甘い夏 煙草の匂い
「真那!」
ドアノブを回す…ご丁寧に鍵が掛かっている。
「…っきしょ!」
足で力任せにドアを蹴る。
さすがボロアパート。一撃で蝶番が外れた。
「真…!」
一瞬…背中に氷が伝ったようだった。
古いキッチンのクッションフロア…その上には真那と馬乗りになった知らない男…。
真那は…腰の後ろで手首を縛られ、口にはタオルを押し込まれている。
いつか見た、ワンピースの部屋着…は着ているが、裾は腰まで捲られていて…パンツは今にも脱がされそうになっていた…。
「…ンンッ!」
涙と鼻水でボロボロになりながらも、必死に訴える。
「…テメェ…」
驚きと怒り…目の前が真っ暗になった。
「…うあっ…!」
…気が付くと、部屋の隅まで移動している男…。
足が痛い…俺が蹴ったのか?
「…真那!」
真那の事は蹴ってないよな?
急いで真那の体を抱き起こし、口からタオルを取り出す。