甘い夏  煙草の匂い



「はぁっ…は…」

「大丈夫か?どこも…」


「…うおぉ!」


真那に気を取られていると、和室にあったテーブルが飛んできた。

「うわ!」


咄嗟に真那の頭を抱え、身を低くすると、テーブルは頭上を飛んでって、ぶつかる事は免れた。



「うわっ…!何?今の音…龍太?!」


廊下から進也の声がする。しかし、蝶番を壊し反対側から開けたドアは、進也側からの通行を妨げていた。


すかさず開いた方から逃げた男は、反対側の階段から降りて行った。


「進也!今出てったヤツ捕まえろ!」



「どうした?」と聞く前に、条件反射で来た方の階段を駆け降りる進也…。

…頼む!捕まえてくれ!



「真那…真那?」



腕の中でガタガタと震えている。急いで手首の拘束を解いてやる。


真那の手首を縛っていたものは…どこにでも売っているビニール紐だった。


白いビニール紐が、僅かに血が滲んで赤く染まっている…。




「あ…あ…」



力なく両手を俺に預けているが、まだ震えは止まらない。









< 139 / 206 >

この作品をシェア

pagetop