甘い夏 煙草の匂い
ボロボロと涙が止まらない。
…ついでに、口元からヨダレも出てくる。タオルを強く押し込まれていたせいもあるだろう。
「…もう大丈夫だから…」
必死で拭ってやるが、次から次へと溢れてくる、真那の恐怖心の証。
ふと気付くと、真那の両手が少しだけ持ち上がっていた。しかし、その両手はどこへ行くでもなく、体のどの部分よりも震えている。
「…真那?」
そっと両手を持ち上げるみる。
「…もしかして、手ぇ上がんない?」
「…うぅっ…」
目をギュッとつぶって、さらに泣き出した。
無理もない…手首を腰の後ろで縛られたうえ、男に馬乗りにされたんだ…。抵抗しようと必死になって、筋肉を痛めたんだろう。
…あぁ、クッソ!進也に会う前に、ここに直行していれば…!!
「真那…ごめんな?もっと早く迎えに来てれば…」
しばらくの沈黙の後、小さくフルフルと首を振る真那。
「いい、無理するな…ホント…ごめん…」
俺から真那に近づき、そっと頭を撫でてみる。