甘い夏  煙草の匂い



鈍い動きで目をキョロキョロさせ、ゆっくりと俺を捕らえる。


「大丈夫か?」

「…。」


俺を見つめたまま、何も答えない…。まだ醒めていないのか?


「腹…減ってないか?今、米を炊いてるから。」

「…。…え…?」


この状況を把握しようと、肘をついて起き上がろうとする。しかし、腕の痛みで顔が歪む。


「おい…無理すんなって。」


背中を支えてまた寝かせようと思ったが、真那の頭が俺の方にコロンと転がって来た。


「大丈夫か?もう少し…」

「私…」


小さな声で、真那が話し始める。



「私…あの人…に?」



言わんとしている事はわかるが…今は、体と心を落ち着かせる事が先だ。

抱きしめたい想いを抑え、なるべく優しく髪を撫でる。


「大丈夫…何もないから…」

「水が…出ないって…」


…水?



「水道…止められて…水が出ないから…って…」


泣きじゃくるわけでもなく、俺に言い訳するかの様に、静かに説明を始めた。






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