甘い夏 煙草の匂い
「ペットボトルに…水をわけて…くれって…」
…なるほど。それが真那の家に侵入した手口か?
どれだけ俺達が警戒しろと言っても、困った隣人を放っておけない性格…。
まさか、隣人だとは誰も思わなかったが…。
「水…入れてたら…」
「真那…もういい。」
「いきなり…手ぇ…」
「わかったから…もう…」
もう…聞きたくない…!
「やだって…言っ…」
「真那!…もう…大丈夫だから…」
堪らず、震えている小さな体を抱きしめる。
力を入れただけで、すぐに折れてしまいそうな細い体。
「もう…喋らなくていい…。俺が悪かった。」
真那の言い訳がピタリと止む。
「俺が、もっと早く迎えに行ってたら…
俺が…悪かった。ホント、ゴメン…。」
腕の中にある真那の頭が少しづつ動き、俺の顔を見ようとしていた。
その顔は、早くも大粒の涙で濡れていた。
「…泣…いて…る…?」
真那の細い指先が、震えたまま、俺の顔に触れる。