甘い夏 煙草の匂い
ヒンヤリとした指先に、何か水分がついていた。
…これはなんだ?
真那の指先を自分の指で追うと、頬が濡れていた。
「…これ…」
…俺が?
「泣かないで…上杉さ…」
「…真那…ホントに…」
…ごめん。そう言いかけた時、しっかりと俺を見つめた真那が、思いきり顔を横に振る。
「違っ…私がしっかりしなかったからっ…」
「違…俺が…」
「やぁっ…上杉さん…」
「真那っ…」
二人で泣き、体を寄せあった。
ヒックヒックと揺れる小さな体が、たまらなく愛しい…。
「真那…」
優しく名前を呼ぶと、返事の代わりに頭が少しズレる。
「ここにいろ…」
「一緒に住め」や「社長が退院するまで」などと伝えれば、もっとわかりやすかっただろうが…何故か胸につかえて、言葉が出て来ない。
しかし、少しの間の後、小さいながらもハッキリと…
「…はい…」
…腕の中から聞こえた声は、いつまでも耳の中で響いていた…。