甘い夏  煙草の匂い



家に着き、なるべく静かに鍵を開ける。


― ガチャ ―



「おかえりなさい!」

「…真那?ただいま…」

「遅くまでお疲れさまでした。」

「お前、まだ起きてたの?」

「あ、ハイ…」

「先に寝てろってメールしたろ?」

「あ、ごめんなさい…なんか、眠れなくって…」


Tシャツの裾をイジイジしながら言い訳する。どうやら、真那の癖らしい。

今日は百合子のハーフパンツを履いているから、いくらでもイジイジしてくれ。



「いや、いいよ。ちょうど良かった。ハイ、これ。」

「え?なん…重っ!」

「お土産。」

「…わぁ!すごい!上杉さんも甘い物好きなんですか?」

「いや、俺はビールだけでいい。」

「え?でも、こんなにたくさん…」

「お前が食え。」

「え?全部?」

「んで、ちょっと太れ。」

「えぇ?」

「腹減った。メシ何?」

「あ…しょうが焼きです。」


リビングに向かう俺の後を、ちょこちょことついてくる真那。







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