甘い夏 煙草の匂い
キスを止め、至近距離で真那を見下ろす。
「…真那。」
返事の代わりに、キスの余韻が冷めやらぬ目で俺を見つめ返す。
「俺の女になれ。」
「…っ!」
急に現実に戻されたかのように目を見開く。
「もう待てねぇよ。…お前が欲しい…」
「待っ…」
「だから、待てねぇって。…真那、大好きだ…。」
「龍…太…さ…」
「だから、俺の女になれ。」
…もうすぐ俺達のツアーが始まる。もちろん毎日ライブをするわけじゃないから、合間を見つけて帰って来れたりはするが…。
明らかに今までよりは頻繁に会えない。その間に、誰が現れるか分からない…。
所属事務所には、同じミュージシャンやタレントなんかもいる。もちろん、顔のイイ奴も売るほどいる。
事務所で声掛けられたりしたら…なんて考えていると、頭が狂いそうになる。
余裕なんて…1ミリもない。
だからこそ“約束”が欲しいんだ。
“俺の女でいる”という約束が…。