甘い夏 煙草の匂い
「…真那は、震えてたって。
お世話になっていた親戚の家を無一文で飛び出して、金に困ってたらしい。
近くで売春している女を見てたら
『バージンだと高いよね』
ってゆうやりとりが聞こえてきて…
見よう見まねで声かけたのが…」
「…ひげオヤジ?」
コクリとうなずく進也。
少し…少しだけ、ホッとしている自分がいた…。
「両親が亡くなってから、すぐに親戚の家に引き取られたらしいんだ。
でも、結局は保険金目当てだったらしくて…
始めは優しかったのに、中学生だった真那に家事や新聞配達をさせるようになったんだってさ。」
「それがイヤで、家を飛び出してきたのか?」
「…そこんちのオヤジに、乱暴されそうになったって…」
「乱暴って…ヤラれそうになったって事?」
「…多分。」
さっきはガッカリしていた俺が、今度は無性に腹がたっていた。
…誰に?なんで?
…いやいや、同じ男として、乱暴はいかんでしょう。