甘い夏 煙草の匂い
パパの取り調べ
― カーン… ―
「ナムナム…」
栄四郎が俺のライターで缶コーヒーを叩き、俺に向かって手を擦り合わせた。
「…よせ。成仏すんだろ?」
「えぇ。迷わず成仏して下せぇ。ナムナム。」
「なんだよ?俺に明るい未来はねぇってか?」
「そこまでされて、まだ愛想つかねぇの?」
「当たり前だろ。これからだ。」
「わぁーお…」
昨夜、帰宅する際に「家で食うから」と言い、みんなで食事に行くのを断った。
その言葉にピンときた栄四郎が、朝イチで「どうだった?新婚さん」と詰め寄ってきた。
いつもなら誤魔化して終わるが、何故かこのモヤモヤを誰かに聞いて欲しくなった。
勿体無いから詳しくは話さず、サクッと説明したら…拝まれた。
「しかし…凄いね、そのコ。“上杉龍太”にここまで我慢させるとはねぇ。」
「…なんか最近、やたら俺に関心持ってねぇか?他人なんて興味なかったろ?」
「ん~…見てて面白い?」
そう言って、残りのコーヒーを飲み干した。