甘い夏 煙草の匂い
「見物料よこせ、コラ。」
「きゃあ。やだぁこの人、こわいぃ。」
フザケながらヒョイと空き缶を掴み、喫煙室から出ていく。
…くそ。おちょくりやがって。
もう一本煙草に火をつけ、携帯を取り出す。
真那…もう社長ん家に帰ってるかな?
メールしてみるか…いや、いいか?
仕事中もメシ食ってる時も、四六時中コイツの事ばかり考えてる。
これも、一種の病気だろうか?
「病気だな。」
ですよね~。
「…。」
…。
…?
「よ。」
「…倉島さん!」
ふと顔を上げると、そこには俺が尊敬しているミュージシャン・倉島さんがいた。
「倉島さんもこのスタジオ使ってたんですか?」
「うん。今度プロデュースするコの音合わせでな。」
倉島さんは煙草吸わないはずなのに、わざわざ喫煙室に入ってきてくれた。
「…それより、すんごいオーラ出してたぞ?そんな顔して携帯見て…女か?」
…どんな顔してたんだ?