甘い夏 煙草の匂い
そこには、手際よく料理を作っていた家政婦がいた。
「あ…お邪魔してます。」
「あ…ども。」
鈴木…さん、だったかな?
ウチの音楽事務所専属の家政婦で、俺んちも週2で掃除に来てもらっている。
先月まで50代オバチャンのシゲさんが担当だったが、引退して、後釜に入ったのが…鈴木さんだ。
家政婦と言っても、俺よりも若い感じだ。
仕事に偏見はないが、地味な感じがするし、話も合わなそうだ。
テーブルでは百合子が、コップにビールを注いでいた。
「は?まじで!ビールなんて缶から直飲みだったお前が?」
「お前ゆうな!」
「コップ?お前んちにあったの?」
「だから!お前ゆうな!」
俺たちの会話を、後ろのキッチンで聞いていた進也と家政婦が、クスクス笑っていた。
2人並ぶと、おっとり派と穏やか派で和やかなムードが出ていた。
「マナ…ちゃんだっけ?なんでコイツと友達になっちゃったの?」
「え…なんでって…百合子さんは、楽しい方ですし…。」
…。
…それだけ?
気ぃ使って話かけたのに、あっさりした返事にちょっとガッカリした。
…やっぱり話し合わなそうだ。