甘い夏 煙草の匂い
「…それで?」
「その現場を、奥さんに見られたらしい。
どう見ても真那が被害者なのに、『お前がウチの主人を誘ったんだろう!』って…
『そんな女は出てけ!』って…」
…なんだよ?それ。
知ってる。そういうの、『言いがかり』って言うんだろ?
…そんな中で、生きてきたのか?コイツ。
「無一文で追い出されて…とりあえず歩いていたら、夜の繁華街に出たらしい。
そこで、社長と出会ったんだって。」
…なんだか、昼ドラよりもドロドロしてんな。
いつの間にかビールを飲み干していた俺は、もう一度冷蔵庫向かった。
ビールよりも強いのが欲しい…。
そう思っていたら、進也がさっき買ってきたウィスキーの瓶が目に入った。
ウィスキーロックを作り、ベランダに戻る途中…。
床に転がっている真那が目に入った。
また寝返りを打ったみたいで、テーブルの脚に頭がぶつかりそうになっていた。
…床の上じゃ、痛くねぇかな?
急に真那の体が、頼りなく見えた。