甘い夏 煙草の匂い
「…パパねぇ、癌が見つかったの…。
…末期ですって…。
」
彩の言う“パパ”は、イケナイ方のパパ。
このマンションも、パパの所有物だ。
「…奥様から連絡があってねぇ…
『主人を支えてあげて下さい』…って。」
修羅場…ではないのか?
「もちろん…私も、傍にいてあげたいの。
これからの大変さは想像できないけど…
でも…私が…傍にいたいの。」
晴れやかな顔をしているのに、涙が一筋こぼれていた。
「だから…私からも連絡する予定だったんだ。
セフレ辞めよって…。」
「そっか…。」
彩のしている事は、世間では許されない事かも知れない…。
しかし、彩はいつも前だけを見ていた。
その目は、筋の通った強い目だった。
…心の底から、幸せになって欲しいと思う。
「…彩。」
「ん…?」
「お前…いい女だな。」
「フフッ…知ってる。
…頑張りなよ?応援してるから。」
「…おぅ。」
…一人、大切な友達を失った。
しかし、どこか晴れやかな気持ちの俺達がいた…。