甘い夏 煙草の匂い
「…なぁ、そろそろ機嫌直せって。」
住所を無理矢理聞き出してセットしたカーナビが、目的地付近だと言う事を知らせる。
しかし、さびれた工場が2・3件並んでいるだけで、アパートらしき建物は見当たらない。
「…ホントに、この辺?」
「…はい。ここで大丈夫です。ありがとうございました。」
そう言って、シートベルトを外し降りようとしていた。
「アホか?こんなに真っ暗なのに置いていけるか!雨も降ってんだぞ?
ちゃんとアパートの前まで行くよ。ドコ?」
「…あの標識の角を左に入って下さい。」
抵抗する事を諦めたのか、大きな溜め息を吐くように真那が指示する。
指示通りに左折すると、突き当たりに工場の事務所のような建物が目に入った。
「おいおい、行き止まりだぞ?」
「…あれが、アパートです。」
「はぁ!?」
良く見ると、確かに外階段がついている2階建。
ドアの数からして、上下合わせて4戸のアパートらしい。
しかし…造りはプレハブそのものだった。