甘い夏 煙草の匂い
「何コレ?こんなとこにすんでんの?」
「…もぅ、だからイヤだったんです!送ってもらうの!」
ビックリして真那を見ると、真っ赤な顔で唇を尖らせていた。
やべ…カワイイ。
「…ホント、ありがとうございました。失礼します。」
不機嫌ながらもキチンと俺の顔を見て、お礼を言う真那。
…こういう所が、コイツの凄いトコだと思う。
どんな事があっても、相手を邪険にはしない…。俺には真似できないな。
助手席を降り、小走りでアパートの階建へ向かう。その後を追い、後へ続く俺。
「え?な…なんですか?」
「いゃ…トイレ借りようと思ってさ。」
「えぇ!?」
「ほら、早く。漏れちゃう漏れちゃう。」
アタフタする真那の体を押し、強引に階建を上がる。
…ホント、隙だらけだな?コイツ。
ドアの鍵を開け、一緒に中に入る。
部屋の中は…これまた質素な造りだった。
玄関に入ると、すぐに4畳位のキッチン。その奥に6畳の和室が見えた。
「トイレ…そのドアです。」
「あ、サンキュ。」
トイレなんて上がりこむ口実に過ぎないが、とりあえず入っといた。