甘い夏 煙草の匂い
ボクに娘さんを下さい!
「あっちぃ…。」
所属事務所の廊下を歩きながら、栄四郎に今日の暑さをグチる。
「…龍太、うっさい。」
「だって、この暑さは異常だろ?まだ梅雨明けしないのか?」
「知らねぇよ。」
「…冷たいのは、お前だけだな。」
すかさず栄四郎のキックが飛んでくる。
「痛ぇ!」
「なぁ、進也は?」
「知らね。」
「ふぅん。」
「社長に話があるから、先に行ってるって。」
「…知ってんじゃねぇか。」
くだらない話をしながら、ダラダラと廊下を歩く俺達。
栄四郎は、俺達のバンドメンバー。
ギターの進也、ドラムの栄四郎、ボーカルの俺の3人で、高校の時に結成した。
面倒見が良く、人当たりもいい進也。
「何を考えているのかわからない」とよく言われる俺。
常に周りに人はいるが、距離感をうまく取り、何気に一匹狼している栄四郎。
そんな栄四郎は、人との付き合いにはほとんど口を出さない。
「そういえば、ロリコンに走ったんだって?龍太。」
…出してるし。