甘い夏 煙草の匂い
「…何で知ってんの?」
「ん~…風の噂?ってか、マジ!?」
「…んだよ。人の事にはあんまり興味ないんじゃなかったのか?」
「それとこれとは別でしょう?上杉さん。」
“それ”が何で“これ”がなんなのか、まったくわからないが…。
社長室のドアの前に来て、小声で栄四郎に忠告した。
「…いいか?あのヒゲオヤジには死んでも言うなよ?」
「へいへい。」
軽い言葉に不安を感じながらも、ドアをノックした。
「はい。」
中から、社長秘書が出てくる。
「あら、お久しぶりです。進也さんはもうお待ちかねですよ?」
そう言われて、奥の社長室へ通された。
「よう、ロリコン野郎。」
…開口一番、ヒゲオヤジがこう言った。
「…な、なんすか?」
「…龍太、お前には話したい事が山程ある。
…だが、まずはツアーの打ち合わせからだ。」
冗談っぽく言ったが、目が笑ってませんよ…?
先に来ていた進也をチラ見すると、口を尖らせて横に首を振る。
…ちきしょう、百合子か?
とりあえず時間もないので、打ち合わせを始めた。