甘い夏 煙草の匂い
「…んじゃ、そういう事で。ツアーまでは体調を崩さないように。」
「「はい、お疲れ様でした。」」
打ち合わせが終わり、ぞろぞろと社長室から出ていく。
「待て、龍太。」
社長に肩をガッと掴まれる。
…あちゃ、やっぱダメ?
「音合わせすんだろ?いつものスタジオに行ってるぜ。」
他人事のように、手をヒラヒラさせながら出て行く栄四郎。
それに続いて、目を合わせないまま出て行こうとする進也。
「待て!」
慌てて進也の手を掴む。
「げ!…俺?」
「…連帯責任だ。」
「関係ねぇだろ?」
「あるだろ?彼女さんに…。」
「げぇ…。」
なんだかんだと言いながら、見捨てられない進也の性格につけ込み、一緒に残ってもらった。
「…で?」
開き直り、座った社長を見下ろす。
「ボケ。何が『で?』だ。人の娘にツバ付けやがって。」
…確かに、ツバはたくさんつけたかも…。
「…まさか、手は出してないだろうな?」
「あたりまえじゃないですか?お父さん。」
言いながら座ると、アイスコーヒーがのっていたコースターが飛んできた。