甘い夏  煙草の匂い






「…んじゃ、そういう事で。ツアーまでは体調を崩さないように。」

「「はい、お疲れ様でした。」」


打ち合わせが終わり、ぞろぞろと社長室から出ていく。


「待て、龍太。」

社長に肩をガッと掴まれる。

…あちゃ、やっぱダメ?



「音合わせすんだろ?いつものスタジオに行ってるぜ。」

他人事のように、手をヒラヒラさせながら出て行く栄四郎。

それに続いて、目を合わせないまま出て行こうとする進也。


「待て!」


慌てて進也の手を掴む。

「げ!…俺?」

「…連帯責任だ。」

「関係ねぇだろ?」

「あるだろ?彼女さんに…。」

「げぇ…。」


なんだかんだと言いながら、見捨てられない進也の性格につけ込み、一緒に残ってもらった。




「…で?」


開き直り、座った社長を見下ろす。


「ボケ。何が『で?』だ。人の娘にツバ付けやがって。」


…確かに、ツバはたくさんつけたかも…。


「…まさか、手は出してないだろうな?」

「あたりまえじゃないですか?お父さん。」

言いながら座ると、アイスコーヒーがのっていたコースターが飛んできた。




< 62 / 206 >

この作品をシェア

pagetop