甘い夏 煙草の匂い
「痛ぇ!」
「ふざけんな!あの子はまだ十代なんだぞ?」
「…知ってるよ。俺も一番の悩み処。」
「じゃあ、さっさと手を引け。」
「嫌です。お嬢さんをボクに下さい。」
今度は、ガラス製の灰皿を掴む社長。
「「わぁー!ストップ!!」」
必死で逃げる俺に、必死で社長の腕を掴む進也。
…くそ!こうなったのも、百合子がベラったせいだ。
社長の手から灰皿を離した進也を、軽く睨む。
「…つうか、どんな風にきいたの?百合子に。」
『百合子』の部分を強調して問う。
「は?ユリからは何も聞いてないぞ?」
ユリとは、百合子の芸名。
「「は?百合子じゃないの?」」
どうやら進也も百合子が犯人だと思っていたらしく、同時に社長へ詰め寄った。
「…タレこみがあった。名無しでな。」
そう言って、写真とパソコンメールを印刷した用紙を見せてくれた。
そこには、ボロアパートの階段を登っていく俺達の姿があった。
…間違いない。昨夜の出来事だ。
メールの文章を確認すると、あっさりとした内容だった。