甘い夏 煙草の匂い
『昨夜9時30分、二人で帰宅。その後、男は朝まで帰らなかった。』
…。
「嘘つけ。一時間もいなかったぞ?」
「…やっぱり、お前か…。」
いまだ炎が激しい社長…。
「いや…まじで、何もしてないっす…。
でも、何でツバ付けたの知ってんの?」
『ダメだ、コイツ』とでも言いたそうに、大きな溜め息を吐きながらソファにもたれこむ。
「…進也にカマかけた。」
「え?知ってるって…社長が言ったから…」
アタフタしだす進也に、改めて睨みを飛ばす。
「…すまん。」
「…いいよ。事実だし。」
言った後に、しまったと思い、社長を見る。
先程の炎は消えていたが、真面目な目をしていた。
「龍太。頼むから、あの子だけは勘弁してくれ。」
「…何でですか?」
「あの子は一般人だ。できれば、普通に成人して、普通の人と普通に結婚してほしい。」
静かに話し始め、煙草に火をつけた。
それを機に、俺と進也も煙草を取り出し、火をつけた。