甘い夏 煙草の匂い
「…とりあえず…という条件でな、あそこに住まわせている。
取り壊された後は、私の家に帰って来ると約束してくれたよ。」
なるほど。だから余計な荷物を置かなかったのか…。
真那の殺風景な部屋を思い出す。控え目に置いてあった観葉植物が、真那の存在そのもののように感じた。
「社長…ひとつ、提案してもいいっすか?」
ダメもとで聞いてみようか…。
「…なんだ?」
社長と進也を交互に見ながら、意を決して口を開く。
「真那…さ、俺んちに住まわせていいかな?」
…フリーズ状態の二人。
「いや…ホラ、オートロックだし?ウチ…。」
フリーズした表情のまま、どんどん顔が赤くなっていく社長。
「龍太…。」
「はい?」
「次回から…お前の部屋には家事に行かせない。」
「は?」
「お前んちは…解約だ!自分で掃除しろ!!」
真っ赤になって震えている…。
…しまった。
進也は…さっさとドアに向かっていた。
「や…ウソ!冗談っす!」
「出てけぇー!」
社内に響き渡りそうな声…。
社長、長生きして下さいね…?